脳を鍛えたいなら、得意なことを続けるのをやめてみる『たった12週間で天才脳を養う方法』
「最近、名前が出てこない」

「あれ、あの俳優……誰だっけ」
顔は浮かんでいます。
出演していた映画も分かる。
なのに、
名前だけが出てこない。
「ほら、あの人だよ」
「誰?」
「だから……あの……」
スマホを取り出します。
検索する。
名前が出てくる。
「ああ! そうそう、この人!」
安心したのも束の間。
数日後。
「この前の俳優、誰だっけ?」
また出てこない。
すると急に、
「もしかして脳が衰えてる?」
と心配になります。
そこで始めるのが、
クロスワード。
数字パズル。
脳トレアプリ。
毎日やっていると、
だんだん速く解けるようになります。
「よし。脳が鍛えられてきた」

たしかに、
クロスワードは上手くなっています。
ただ、
サンジェイ・グプタ氏の『たった12週間で天才脳を養う方法』には、
少し意外な考え方が出てきます。
脳を鍛えるなら、得意になったことを繰り返すだけでは足りない。
むしろ必要なのは、
「ちょっとうまくできないこと」
なのです。
※本記事は、書籍の内容をもとに筆者の個人的な感想や解釈を交えて紹介しています。詳しい内容については実際の書籍をご確認ください。
クロスワードより「左手で夕食」

夕食の時間。
右利きの男性が、
突然スプーンを左手に持ち替えます。
「……食べにくい」
ご飯をすくう。
少しこぼす。
もう一度。
「なんでこんなことしなきゃいけないんだ」
家族から見れば、
ただ食事が下手になっただけです。
でも、
こうした「普段とは違うことをする」ことが、
脳には刺激になります。
たとえば、
右利きなら左手を使う。
知らない道を歩く。
初めての料理を作る。
新しい楽器を触る。
これまでやったことのない趣味を始める。
大事なのは、
少し頭を困らせること。
クロスワードを毎日やっていれば、
だんだん解くのが速くなります。
これは悪いことではありません。
ただし、
同じことを繰り返して上手になるのと、
脳に新しい刺激を与えることは同じではありません。
ここで出てくるのが、
「認知予備力」
という考え方です。
難しく聞こえますが、
簡単にいえば、
脳の中に使える道をたくさん持っておく力。
いつも同じ道しか使っていなければ、
その道を走るのはどんどん上手くなります。

でも、
新しいことを始めると、
「こっちはどうする?」
「次は?」
「分からない」
と、
普段あまり使っていない働きまで必要になります。
実際、
高齢者にデジタル写真やキルティングなど、
それまで経験のなかった技能を数か月学んでもらった研究では、
負荷の低い活動をした人たちより、
一部の記憶能力で改善が確認されました。
脳にとっては、
「できる!」
だけでなく、
「あれ? どうやるんだ?」
も大事なのです。
「じゃあ何を始めればいい?」

「新しいことがいいのは分かった」
でも、
ここで困ります。
「何を始めればいい?」
英会話?
ピアノ?
陶芸?
プログラミング?
急に大げさになります。
でも、
そこまで大きな挑戦でなくても構いません。
たとえば、
いつものスーパーまで違う道を歩く。
作ったことのない料理を一品作る。
普段読まないジャンルの本を開く。
スマホで調べる前に、
少しだけ思い出してみる。
右手でやっていることを、
左手でやってみる。

「そんなことでいいの?」
いいのです。
目的は、
上手になることではありません。
脳を自動運転から一度降ろすこと。
本書では、
運動、
睡眠、
食事、
人とのつながりも、
脳を健康に保つ大切な柱として扱われています。
特に意外なのが、
運動です。
「脳を鍛えるのに、なぜ体?」
と思うかもしれません。
でも研究では、
高齢者が1年間有酸素運動を続けたところ、
記憶に関係する海馬の一部が大きくなったという結果も報告されています。
頭を鍛えたい。
だから机に座る。
そう考えがちですが、
答えは案外シンプルです。
まず動く。
そして、
少しだけ知らないことをやってみる。
それなら、
今日からでも始められます。
最後に

歳を取ると、
できないことが増えるのが怖くなります。
だから、
できることばかり選びたくなる。
でも脳にとっては、
少しくらい
「うまくできない」
が残っているほうがいいようです。

新しいことを始めて、
「全然できないな」
と思っても、
落ち込む必要はありません。
少なくとも、脳には良いことをしています。
