『話を聞かない男、地図が読めない女』――なぜ「相談」が「ケンカ」に変わるのか?
「ただ聞いてほしかっただけなのに…」

「ねえ、今日仕事で最悪なことがあった」
帰宅した彼女が、ため息をつきながら言いました。
彼氏はスマホを置きます。
「どうしたの?」
「上司に急に仕事を押しつけられて……」
「それは大変だったね」
……と、言えば終わる話でした。
しかし、彼はここで動きます。
「でも、それなら最初に断ればよかったんじゃない?」
「え?」
「次からはちゃんと言ったほうがいいよ。仕事の量がおかしいなら相談したほうがいい」
彼は真剣です。
怒らせようとしているわけではありません。
むしろ、
「困っているなら助けてあげたい」
と思っています。

ところが彼女の反応は違いました。
「もういい」
「え?」
「そういうことを言ってほしかったんじゃない」
男性側からすると不思議です。
「いや、解決方法を考えたのに」
女性側からすると不思議です。
「いや、今は解決方法を探してないのに」
同じ会話をしています。
でも、なぜか話がすれ違う。
この不思議なズレをテーマにした本が、
アラン・ピーズ氏、バーバラ・ピーズ氏の
『話を聞かない男、地図が読めない女』
です。
※本記事は、書籍の内容をもとに筆者の個人的な感想や解釈を交えて紹介しています。詳しい内容については実際の書籍をご確認ください。
男は「問題」を聞き、女は「気持ち」を話す

この本で特に面白い考え方があります。
それは、
男性と女性では、会話の目的が違うことがある
というものです。
例えば、こんな場面です。
妻が言います。
「最近、仕事が大変なの」
夫が答えます。
「じゃあ転職したら?」
妻:
「……」
夫:
「いや、だって大変なんでしょ?」
夫は間違ったことを言っていません。
仕事が大変なら環境を変える。
合理的な解決策です。
でも妻が求めていたものは、
「転職する方法」
ではありません。
「それは大変だったね」
という一言でした。

つまり、
男性は、
「どうすれば問題がなくなるか?」
を考えやすい。
女性は、
「この気持ちを誰かと共有したい」
と考えることがある。
本書では、この違いをこんなふうに説明します。
男性にとって会話は、
壊れた機械を直す作業。
女性にとって会話は、
一緒に機械を眺めながら、
「大変だったね」
と言い合う時間。
男性は工具箱を持ってきます。
女性は隣に座ってほしいと思っています。
だから、
「直したのに、なぜ怒るの?」
という事件が起きます。
同じ道を説明しているのに伝わらない

もう一つ、本書で紹介される有名な例があります。
それがタイトルにもなっている、
「地図が読めない女」
です。
例えば旅行中。
男性:
「次の交差点を右。そのあと500メートル」
女性:
「どこの交差点?」
男性:
「だから次の交差点」
女性:
「近くに何か目印は?」
男性:
「いや、距離を言ったじゃん」
男性は位置関係で説明します。

女性は周囲の情報で理解しようとします。
男性:
「目的地までのルートを説明した」
女性:
「どこにいるのか分からない」
どちらも本人の中では完璧な説明です。
ただ、使っている地図が違う。
これが、この本の面白いところです。
相手が理解できないのではなく、最初から見ている場所が違うのです。
相手を変えるより、説明書を読む

では、この考え方は日常でどう役立つのでしょうか?
大切なのは、
「男はこうだから」
「女はこうだから」
と決めつけることではありません。
相手の反応を見た時に、
「なぜ分からないんだ」
ではなく、
「もしかすると、求めているものが違うのかもしれない」
と考えることです。
例えば、
「今日疲れた」
と言われた時。
すぐに、
「じゃあ早く寝たら?」
と言いたくなる人もいるでしょう。
でも、その前に一言。
「何かあった?」
と言うだけで、会話は変わります。

逆に、
「どうすればいい?」
と聞かれた時には、
共感だけではなく、一緒に解決策を考えることも必要です。
結局、人間関係のすれ違いは、
相手の話を聞いていないことより、
「自分と同じ聞き方を相手にも求めてしまうこと」
から起こります。
自分にとって普通の会話が、
相手にとっては別の意味になる。
そこを知っているだけで、
「なんで伝わらないの?」
という場面は少し減るかもしれません。
最後に

男は答えを探し、
女は気持ちを探す。
そんな違いがあるのだとしたら、
恋人や夫婦の会話で必要なのは、
相手を説得することではなく、
まず相手が何を探しているのかを見ることなのかもしれません。
ただし、一番難しいのは、
「ちゃんと話を聞いて」
と言われた時に、
「じゃあ具体的に何を聞けばいい?」
と聞いてしまうことです。
その瞬間、また新しい問題が始まります。
