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なぜ人は「必要ないもの」を欲しくなるのか?『欲望の錬金術』が教える、人間を動かす不合理の力

メモ屋
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「それ、本当に必要なの?」

買い物をしている時、こんな経験はありませんか?

「これ、買おうかな……」

「でも、よく考えたら今あるもので困ってないよね」

頭では分かっています。

必要ではない。

なくても生活できる。

でも、なぜか欲しい。

例えば、少し高い洋服。

似たような服なら、もっと安いものもあります。

便利な機能があるわけでもありません。

それでも、

「こっちの方が好き」

と思ってしまう。

不思議です。

もし人間が本当に合理的なら、

一番安いもの。
一番性能が良いもの。
一番効率的なもの。

だけが選ばれるはずです。

しかし現実は違います。

「なんとなくこっちがいい」

「持っているとうれしい」

「この会社だから買いたい」

そんな理由で商品を選ぶことがあります。

広告業界で長年、人間の欲望を見てきたロリー・サザーランド氏は、この不思議に注目しました。

『欲望の錬金術ー伝説の広告人が明かす不合理のマーケティング』が教えてくれるのは、

人は、価格や性能だけを比べて商品を選んでいるわけではない。

ということです。

そこには、

「なんとなく好き」

「持っていると気分がいい」

「この商品には特別な意味がある」

という、数字では測れない価値があります。

そして時には、その目に見えない価値のほうが、商品の性能や価格以上に人の心を動かすことがあります。

僕たちが「なぜか欲しくなるもの」の裏側には、こうした不合理な心理が隠れているのです。

※本記事は、書籍の内容をもとに筆者の個人的な感想や解釈を交えて紹介しています。詳しい内容については実際の書籍をご確認ください。

商品ではなく「意味」を売っている

この本で特に面白い考え方があります。

それは、

「人は商品そのものではなく、その商品が持つ意味を買っている」

というものです。

例えば、高級ブランドのバッグ。

「ただの袋じゃないか」

と言われれば、その通りです。

材料だけを見れば、

革。

金具。

糸。

それだけです。

でも、持つ人にとっては違います。

「このブランドを持っている自分」

「少し大人になった気分」

「憧れの世界に近づいた感じ」

そこまで含めて価値になります。

つまり、人が買っているのはバッグだけではありません。

そのバッグが作り出す、

「自分はこういう人間だ」

という物語です。

サザーランド氏は、この価値の変化を「錬金術」と呼びます。

普通の材料から、別の価値を生み出す。

昔の錬金術師は、

「鉛を金に変えたい」

と考えました。

しかし現代の錬金術師が変えるものは、

商品の意味なのかもしれません。

「この商品、性能は普通なのに、なぜか人気ですね」

「そこに新しい意味が生まれたからです」

そんな会話が、この本の中では何度も登場します。

1000ポンドの商品より15ポンドのペンギンが選ばれた理由

本書には、人間の価値判断がいかに不思議なものかを感じさせる話があります。

ある企業が、2種類の景品を用意してキャンペーンを行いました。

1つ目は、

「1年間無料の電気」

です。

金額にすると約1000ポンド。

そして、もう1つは、

ペンギン型のライト。

こちらは約15ポンドほどの商品でした。

さて、どちらの方が魅力的に感じるでしょうか?

金額だけを見れば、答えは明らかです。

1000ポンド相当の電気無料の方が、はるかに価値があります。

「どう考えても、こちらの方が人気になるだろう」

そう思いますよね。

ところが、実際の結果は違いました。

多くの人が興味を示したのは、

高価な電気無料ではなく、

小さなペンギン型ライトの方だったのです。

なぜでしょうか?

「1000ポンドの方がお得なのに?」

そう感じますよね。

しかし、人間は電卓のように判断しているわけではありません。

ペンギンには、

「かわいい」

「部屋に置きたい」

「手に入れた後の生活を想像できる」

という、数字では測れない魅力があります。

一方で、

「電気代無料」

は確かに大きなメリットです。

でも、その価値は頭では理解できても、そこから楽しい場面を思い浮かべることは難しい。

人間は、

「どちらが得か」

だけではなく、

「どちらを欲しいと思うか」

で選びます。

そして時には、15ポンドの小さなペンギンが、1000ポンドの価値を上回ることもあるのです。

最後に

僕たちは、自分の買い物には理由があると思っています。

「必要だったから買った」

「便利だから選んだ」

「値段を比べて決めた」

きっと、そう考えています。

でも、少し振り返ってみると、不思議な買い物もあります。

安い商品があるのに、少し高い方を選んだ。

使う予定がないのに、限定品だから買った。

古いものなのに、思い出があって捨てられない。

そこには、価格や性能だけでは説明できない理由があります。

人間は、

「必要だから欲しい」

と思っています。

でも実際には、

「欲しいと思った理由を、あとから探している」

こともあります。

だから企業は、

ただ商品を作るだけではなく、

「なぜ欲しくなるのか?」

まで考えます。

そして僕たちは、

「これは本当に必要だから買った」

と思いながら、

気づかないうちに、

誰かが作った物語や意味も一緒に買っているのかもしれません。

もしかすると現代の錬金術とは、

鉛を金に変えることではなく、

「普通の商品に、特別な価値を宿す技術」

なのかもしれません。

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