気になる一冊
PR

相談された瞬間、答えを言いたくなる人へ――その親切、本当に相手のためですか?『アドバイスしてはいけない』

メモ屋
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

「それならこうすれば?」を言うのが早すぎる

昼休み。

同僚がコーヒーを持って隣に座りました。

「ちょっと相談していい?」

「いいよ。どうした?」

「最近、新人との接し方が難しくてさ」

「ああ、それならもっとハッキリ言った方がいいよ」

「いや、まだ何があったか話してないんだけど」

「だいたい分かるって」

こんなこと、ありませんか?

誰かから相談された瞬間、

頭の中で勝手に、

「解決策を考えるモード」

が始まってしまう。

家庭でも同じです。

「最近ちょっと仕事がつらくて……」

「転職したら?」

「いや、そういう話じゃなくて」

「じゃあ休み取れば?」

「だから、ちょっと聞いて」

まだ相手は、話し終わっていません。

でもこちらはもう、二つも解決策を出しています。

なぜなら、

困っている人を見ると、

「何とかしてあげたい」

と思うからです。

悪気はありません。

むしろ親切です。

だから、自分ではなかなか気づきません。

「いいことをしている」

と思っているからです。

今回紹介するのは、マイケル・バンゲイ・スタニエ氏の
『アドバイスしてはいけない 部下も組織も劇的にうまくいくコーチングの技術』

タイトルだけ見ると、

「人に何も教えるな」

と言っているように見えます。

でも、そうではありません。

問題なのは、

アドバイスすることではなく、アドバイスするのが早すぎること。

相手の悩みがまだ見えていないうちから、

こちらが勝手に答えを作ってしまう。

しかも厄介なことに、

本人はそれを、

「親切」

だと思っています。

※本記事は、書籍の内容をもとに筆者の個人的な感想や解釈を交えて紹介しています。詳しい内容については実際の書籍をご確認ください。

心の中にいる「アドバイス・モンスター」

本書には、

「アドバイス・モンスター」

という面白い考え方が登場します。

誰かが困っている。

その瞬間、

心の奥から小さな怪物が出てきます。

「よし。俺が解決してやろう」

この怪物には、大きく3つのタイプがあります。

まずは、

「答えを教えなきゃ」

という怪物。

部下がやってきます。

「取引先とのやり取りで困っていて……」

「電話した方がいい」

「でも、実は――」

「メールじゃダメ。こういうときは電話だよ」

まだ事情は分かっていません。

でも、

上司なら答えを知っているべきだ。

そんな気持ちがあるので、

つい何か言いたくなる。

次は、

「俺が助けなきゃ」

という怪物。

「その資料、俺が直そうか?」

「自分でやってみます」

「いいからいいから」

翌日。

「このメールも俺が見ようか?」

数日後。

「この件、どうすればいいでしょう?」

「まず俺に見せて」

毎回助けているうちに、

部下はあることを学びます。

「困ったら、この人に聞けばいい」

そして上司は、

しばらくすると言い始めます。

「うちの部下は、自分で考えないんだよなあ」

なかなか見事な育成です。

最後は、

「自分で手綱を握っていないと不安」

という怪物。

「この仕事、任せるよ」

「分かりました」

10分後。

「どう?」

30分後。

「一回見せて」

1時間後。

「……やっぱり俺がやる」

任せた時間、

約60分。

この3つに共通しているのは、

どれも悪人ではないことです。

責任感がある。

助けたい。

失敗させたくない。

優秀でありたい。

そんな気持ちから、

アドバイス・モンスターは出てきます。

だから倒しにくい。

本人は怪物だと思っていません。

「面倒見のいい人」

だと思っています。

しかも、人にアドバイスすると、

「自分は相手に影響を与えている」

という感覚が強くなることを示した心理学研究もあります。

つまり、

「君のために言っているんだ」

と思いながら、

言っている本人も少し気持ちいい。

相談している人は困ったままなのに、

相談された人だけ、

なんとなく仕事をした気になっている。

ここまでくると、

モンスターが出てくる理由も少し分かります。

答える前に、もう一つだけ聞いてみる

では、

こういった状況に陥っている自分はどうすればいいのでしょう?

難しいことをする必要はありません。

答えるまでを、少しだけ遅くするのです。

たとえば部下が、

「仕事が多すぎるんです」

と言ってきたとします。

いつもなら、

「優先順位をつけよう」

と言いたくなる。

そこを少しだけ我慢して、

「ほかには?」

と聞いてみる。

「会議も多くて」

「それだけ?ほかには?」

「……頼まれると、断れないんですよね」

ここで、

最初とは違う問題が出てきました。

最初は、

「仕事が多い」

という話でした。

でも本当に困っていたのは、

「断れない」

ことだったのかもしれません。

もし最初の一言だけを聞いて、

「タスク管理をしよう」

とアドバイスしていたら、

的外れな問題を解決していたことになります。

これは職場だけの話ではありません。

家で子どもが、

「これ分からない」

と言ったとき。

「答えは3だよ」

と教えれば、その問題はすぐ終わります。

翌日。

「これ分からない」

「答えは5」

また終わります。

その翌日。

「これ分からない」

「ちょっとは自分で考えた?」

「だって聞いた方が早いじゃん」

確かにその通りです。

いつでも答えてくれる人がいるなら、

わざわざ考える必要はありません。

会社でも同じです。

毎回上司が答えを出せば、

部下はだんだん、

「考えてから相談する」

のではなく、

「相談して答えをもらう」

ようになります。

そんなとき、

すぐ答える代わりに、

「あなたはどうしたい?」

と聞いてみる。

「うーん……A案ですかね」

「どうして?」

「納期を考えると、その方が現実的なので」

話しているうちに、

「なんだ。もう考えてるじゃん」

と分かることがあります。

もちろん、

何でも質問で返せばいいわけではありません。

知らないことなら教えればいい。

危険な判断なら止めればいい。

経験者だからこそ伝えられることもあります。

大事なのは、

アドバイスを禁止することではありません。

その前に、

相手が何に困っていて、

自分ではどう考えているのか。

そこまで聞いてから口を開く。

ほんのそれだけです。

友人から、

「最近、仕事がつらくて」

と言われたときも、

すぐ、

「転職したら?」

と言わなくていい。

「何が一番つらい?」

と聞いてみる。

もしかすると相手が欲しいのは、

転職先ではなく、

(話しているうちに)自分の気持ちを整理する時間

なのかもしれません。

最後に

ある日。

部下がやってきました。

「ちょっと相談していいですか?」

上司は反射的に口を開きます。

「それなら――」

止まりました。

一度、口を閉じます。

「……君はどうしたい?」

部下は少し考えました。

「実は、自分なりに案があって」

話を聞いてみると、

ちゃんと考えています。

数分後。

「じゃあ、その方法でやってみます」

「うん。やってみて」

部下は自分の席へ戻っていきました。

上司は、その背中を見送ります。

何も教えていません。

解決策も出していません。

昔の成功体験を語る時間もありませんでした。

少しだけ物足りません。

「……俺、今日なんにもしてなくない?」

たぶん、

そのくらいでちょうどいいのです。

少なくとも、

部下の仕事まで奪うよりは……。

記事URLをコピーしました