仕事が楽になったのに、なぜ人間はいらなくなるのか?――『ホワイトカラー消滅』が問いかける、AI時代の働き方
仕事が楽になるはずだった

会社員の男性が、山積みの書類を前にため息をついています。
「毎日、資料作りばかり。誰か代わりにやってくれないかな……」
そんなある日、会社に生成AIが導入されました。
今まで何時間もかかっていた資料が、あっという間に完成します。
「すごい! これなら仕事が楽になるぞ!」
そこに、上司がやって来ました。
「ところで、君はこれから何をするの?」
男性は言葉に詰まります。
仕事を減らしたかっただけなのに、仕事そのものがなくなりそうです。
AIが自分の仕事をできるようになったとき、会社は自分を雇い続けてくれるのでしょうか?
※本記事は書籍や著者インタビューをもとに、筆者の解釈や創作を交えて紹介しています。AIや雇用などの将来予測には不確実性があり、本文の仮定は将来の失業率を予測するものではありません。詳しくは実際の書籍をご確認ください。
部下がいなくても仕事が回る?

『ホワイトカラー消滅』の著者、冨山和彦氏は、興味深い例を挙げています。
上司が1人、部下が4人いる職場。
「この資料を調べておいて」
部下たちは情報を集め、整理し、報告します。
ところが、生成AIなら同じ作業の多くを短時間でこなせます。
「あれ? 部下がいなくても仕事が回るんじゃないか?」
もし4人分の仕事をAIが代行できれば、その組織では5人のうち4人が不要になるかもしれません。
もちろん、これは説明のための仮定であり、会社員の8割が失業するという確定した予測ではありません。
さらに面白いことに、著者・冨山氏自身も本書の執筆に生成AIを活用したと語っています。
ホワイトカラーの仕事がAIに置き換わるという本を、AIに仕事を手伝わせながら書いていたのです。
どうやら、未来の話をしているうちに、その未来が執筆現場にもやって来ていたようです。
AIに仕事を任せたあと、人間は何をする?

では、AIに仕事を任せた人間は、何をすればよいのでしょうか?
ある会社で、商品の売上が落ちていました。
上司が部下に指示します。
「売上が落ちた原因を調べてくれ!」
部下はAIを使って、売上データを分析しました。
すると、ある商品が以前より売れていないことが分かります。
「この商品の売上が、先月より30%落ちています!」
※数字は説明用の架空の例です。
ここまではAIが手伝ってくれます。
しかし、問題はここからです。
なぜ売れなくなったのか?
値段が高いのか?
ライバル商品に負けているのか?
お客さんの好みが変わったのか?
部下は実際に売り場を見に行き、お客さんや店員に話を聞きました。
すると、商品が目立たない場所に置かれていることが分かりました。
「商品の置き場所を変えてみませんか?」
AIは売上が落ちた商品を見つける手助けをしました。
人間は現場を確かめ、改善方法を考えました。
もちろん、AIも原因の候補を考えることはできます。
それでも、実際に何が起きているか確かめ、どう行動するか決めるのは人間の大切な役割です。
AIにできる作業は任せて、人間はその結果を使って問題を解決する。
これからは、そんな働き方がますます重要になるのかもしれません。
最後に

仕事を減らしたかっただけなのに
昔から人間は、面倒な仕事を減らそうとしてきました。
計算が大変だから、電卓を作りました。
書類作りが大変だから、パソコンを使いました。
そして今度は、考える仕事までAIに手伝ってもらうようになりました。
「これで、もっと楽に働ける!」
会社員たちは大喜びです。
ところが、経営者は別のことを考えていました。
「こんなに仕事が減ったなら、人も減らせるんじゃないか?」
人間は、仕事を減らすために一生懸命努力してきました。
そして、その努力がとうとう実を結ぼうとしています。
ただし、減るのは仕事だけとは限らないようです。
