「自由に考えて」と言われたのに、自由すぎると怒られるのはなぜ?――『Deep Skill』で見つけた会社の不思議
「自由に考えて」と言ったのはそっちでは?

ある日のこと。
上司から、こんなことを言われます。
「今までのやり方にとらわれなくていい。自由に考えてみて」
「分かりました!」
せっかくなので、思い切って考えます。
これまで扱ったことのない商品。
今までとは違うお客さん。
会社の常識から少し離れた、新しい企画。
「できました!」
ところが上司は資料を見るなり、
「いや、これはちょっと違うな」
「え?」
「うちの会社がやることじゃないだろ」
「……自由に考えていいって言いましたよね?」
会社では、ときどきこんな不思議なことが起こります。

「自由に考えて」
「大胆なアイデアを」
「常識にとらわれるな」
そう言われたから、その通りにした。
なのに自由すぎると怒られる。
だったら最初から、
「ここからここまでの範囲で自由に考えて」
と言ってくれればいいのに。
『Deep Skill』を読んでいると、このモヤモヤを少し違った角度から見ることができます。
※本記事は、書籍の内容をもとに筆者の個人的な感想や解釈を交えて紹介しています。詳しい内容については実際の書籍をご確認ください。
上司の頭の中には「フェアウェイ」と「OB」がある

本書で面白かったのが、
上司の頭の中には「フェアウェイ(ボールを打って進む安全な範囲)」と「OBゾーン(コースの外に出てしまう失敗の範囲)」がある
という考え方です。
ゴルフを思い浮かべると分かりやすいかもしれません。
上司が、
「自由に打っていいよ」
と言ったとしても、本当に360度どこへ打ってもいいわけではありません。
「このあたりなら面白い」
というフェアウェイがあり、
「さすがにそこへ行ったらダメ」
というOBがあります。
問題は、その境界線を上司自身もうまく説明できていないことです。
だから部下は、
「自由に考えろと言ったのに!」
となります。

そこで本書では、こちらから境界線を探っていく方法を提示しています。
「今の商品を、違うお客さんに売るのはどうですか?」
「それならありだな」
「では、まったく違う商品を作るのは?」
「そこまでは考えていない」
「海外へ出すのは?」
「それは面白いかもしれない」
こうして話していくと、
「あ、このあたりまではいいのか」
「ここから先は違うのか」
と、見えなかったフェアウェイが少しずつ見えてきます。
つまり大切なのは、
言われた言葉だけを聞くことではなく、その言葉の奥にある「本当はどこまでならいいのか」を探ること。
上司の曖昧な指示を、こちらから具体的にしてしまうわけです。
「自由に考えて」の本当の意味は、
「何でも好きにしていい」
ではなく、
「私もまだ答えをうまく説明できないから、一緒に探してほしい」
なのかもしれません。
正しいことを言えば動く、とは限らない

この考え方は、新しい企画を考えるときだけではありません。
例えば会議で、
「数字を見る限り、この方法が一番合理的です」
と説明したとします。
ところが、
「今回は見送ろう」
と言われる。
「でも、こちらの方が正しいですよね?」
そう言いたくなります。
けれど本書『Deep Skill』では、会社は正しさだけで動くわけではないと考えます。
営業には営業の事情がある。
上司には上司の事情がある。
別の部署には別の都合があります。
だから、
「自分の案が正しいことを証明する」
だけで終わらず、
「相手は何を気にしているんだろう?」
と考えてみる。

「予算が気になりますか?」
「失敗したときのリスクでしょうか?」
「この部分を小さく始めればどうですか?」
そう聞いてみると、
動いてくれない理由が初めて見えてくることがあります。
仕事では、
正しい答えを持っている人より、相手が何を気にかけているのか見つけられる人のほうが、話を前へ進められることがあります。
これが『Deep Skill』を読んでいて、特に面白いと思ったところでした。
最後に

「自由に考えて」と言われたら、いきなり遠くまで走り出す前に、「ちなみに、どこから先がOBですか?」と聞いてみる――会社で迷子にならないためには、そのくらいがちょうどいいのかもしれません。
