まだ何も起きていないのに、なぜ人間は勝手に不幸になるのか?――『考えすぎてしまうあなたへ』が教える、頭の中で作られる心配事の正体
上司に呼ばれただけなのに

ある日の夕方。
会社員の男性が、上司から声をかけられました。
「明日の朝、ちょっと話があるから」
たったそれだけです。
ところが、男性は気になって仕方がありません。
「何か失敗したかな……?」
帰り道では、さらに悪い想像が膨らみます。
「まさか、クビになるんじゃ……」
自宅に帰るころには、退職後の生活まで心配し始めました。
そして夜。
「住宅ローンはどうするんだ!」
とうとう眠れなくなってしまいました。
しかし、上司は「話がある」と言っただけ。
まだ何も起きていないのに、男性は頭の中ですでに失業していたのです。
※本記事はグウェンドリン・スミス著『考えすぎてしまうあなたへ』および公開資料をもとに、筆者の解釈を交えて2026年に制作しています。会話や登場人物は創作です。詳しくは実際の書籍をご確認ください。
人間は、勝手に悪い未来を作ってしまう

臨床心理学者のグウェンドリン・スミス氏は、多くの患者が心配事を繰り返し考えていることに気づきました。
その経験から生まれたのが『考えすぎてしまうあなたへ』です。
本書では、物事の受け取り方をゆがめる考え方のクセを「思考ウイルス」と呼んでいます。
例えば、先ほどの男性。
「明日、絶対に怒られる!」
しかし、怒られる証拠はありません。
男性は、自分が想像した未来を事実のように受け止めているのです。
「怒られるかもしれない」
「評価が下がるかもしれない」
「会社を辞めることになるかもしれない」
こうして心配事が次々と増えていきます。
考えることは問題解決に役立ちますが、考え続けたからといって未来を予言できるわけではありません。
考えすぎを止めるには、どうすればいい?

では、考えすぎてしまう人は、どうすればよいのでしょうか?
本書で紹介されている方法の一つが「思考日記」です。
頭に浮かんだ考えを書き出して、整理します。
例えば、先ほどの男性。
紙に実際に起きたことを書きました。
「上司から明日の朝に話があると言われた」
次に、自分が考えたことを書きます。
「きっと怒られる」
「クビになるかもしれない」
男性は、紙を見つめました。
「あれ? クビになるなんて一言も言われていないぞ……」
仕事の相談かもしれません。
もちろん、本当に注意される可能性もあります。
でも、今はまだ分かりません。
大切なのは、実際に起きたことと、自分が想像したことを区別すること。
思考日記は、自分の考えを少し離れたところから見直すための方法なのです。
最後に

心配事だけが年中無休
翌朝。
男性は緊張しながら上司の席へ向かいました。
「昨日のお話って、何でしょうか?」
すると、上司はあっさり答えました。
「来月の仕事の相談なんだけど」
叱責でも、解雇でもありません。
男性はホッとしました。
昨夜の心配は、どうやら取り越し苦労だったようです。
ところが、その日の午後。
「来月の仕事で失敗したらどうしよう……」
もう次の心配を始めています。
どうやら、心配事というものは、ひとつ解決しても、次の心配事が順番待ちをしているようです。
