なぜゲームでは何時間も働けるのに、現実では働きたくないのか?――『人生ドラクエ化マニュアル』が教える、ちょっと不思議な仕事の楽しみ方
ゲームなら、何時間でも働ける

日曜日の夜。
男性がゲームをしています。
同じモンスターを倒しては、経験値を稼ぐ。
それを、もう3時間も繰り返しています。
そこへ妻がやってきました。
妻「さっきから同じことばかりしてない?」
男性「レベル上げしてるんだよ」
妻「それ、楽しいの?」
男性「楽しいよ。もう少しで強くなるから」
妻が時計を見ます。
妻「明日の仕事も、それくらい頑張れたらいいのにね」
男性の手が止まりました。
男性「……それとこれとは別だろ」
でも、考えてみると不思議です。
ゲームでは、何時間も単純作業を続けられます。
ところが現実では、同じ作業を30分続けるだけでも退屈です。
ゲームでは進んで苦労するのに、現実では苦労したくない。
この違いは、いったい何なのでしょうか?
※本記事は、書籍の内容をもとに筆者の個人的な感想や解釈を交えて紹介しています。詳しい内容については実際の書籍をご確認ください。
仕事が楽しくないのは、苦労が多いから?

翌朝。
男性は会社で上司に呼び止められました。
上司「この資料、今日中に頼むよ」
机の上には、大量の書類。
男性「……こんなにあるんですか?」
上司「よろしく!」
男性はため息をつきます。
「仕事がもっと楽だったらいいのにな……」
確かに、仕事が減れば楽になります。
難しい問題がなくなれば、失敗する心配も減ります。
でも、それがゲームだったらどうでしょうか?
モンスターが一匹も出てこない。
迷路もない。
魔王の城に到着すると、魔王がすぐに降参する。
魔王「参りました。世界はお返しします」
勇者「……えっ、もう終わり?」
苦労はありません。
しかし、面白さもあまりありません。
ゲームでは、苦労があるからこそ面白くなることがあるのです。
ゲーム会社の社員が見つけた、3つの秘密

『人生ドラクエ化マニュアル』の著者JUNZO氏は、かつてゲーム会社のエニックスで働いていました。
ある日、上司からゲームについてのレポート作成を頼まれます。
最初は面倒だと思っていたそうです。
しかし、ゲームについて調べるうちに、ある仕組みに気づきました。
ゲームを成立させる重要な要素は、次の3つだというのです。
「目的・ルール・敵」
例えば、ドラゴンクエスト。
魔王を倒すという目的があります。
武器や魔法にはルールがあります。
そして、行く手にはモンスターが待っています。
男性が考えます。
「そういえば、ゲームでは強い敵が出ると、ちょっとワクワクするな……」
強い敵がいるから、装備を考える。
簡単には勝てないから、レベルを上げる。
そして、苦労して倒したときに達成感が生まれる。
ゲームでは、邪魔なはずの敵が、面白さを生み出しているのです。
現実の敵は、なぜ面白くない?

男性は、会社の机に積まれた資料を見ました。
「ゲームなら強い敵を歓迎するのに、仕事では勘弁してほしいんだよな……」
でも、少し考え方を変えてみます。
ゲームでは、魔王を倒すという目的があります。
だから、途中のモンスターにも戦う意味が生まれます。
では、現実の仕事ではどうでしょうか?
何のためにやっているのか分からない仕事。
終わらせても、また次の仕事が増えるだけ。
それでは、なかなか達成感が生まれません。
苦労の多さだけでなく、その苦労が何につながるのかも大切なのです。
ゲームと現実の違いは、単に敵が強いか弱いかではありません。
自分が何を目指しているのか?
そして、どうすればそこへ近づけるのか?
それが見えているかどうかも、大きな違いなのです。
仕事にも、攻略方法がある

男性は、大量の資料をもう一度見ました。
「これをゲームにするとしたら……」
まず、目的を決めます。
今日中に資料を完成させること。
次に、ルールを確認します。
限られた時間と情報で仕上げること。
そして、敵は資料の量と作業の難しさです。
男性は作業を小さく分けました。
情報を集める。
構成を考える。
文章を作る。
最後に確認する。
しばらくすると、資料の半分が完成しました。
男性「おっ、半分まで来た!」
いつもなら、まだ半分も残っていると考えていたところです。
でも今回は、半分まで攻略できたと考えてみます。
もちろん、資料作成が急に楽しいゲームになったわけではありません。
しかし、何から始めればいいのか分からなかった仕事に、少し道筋が見えてきました。
問題を消すことはできなくても、攻略方法を考えることはできるのです。
人生をゲームにするため、本当に会社を辞めた男

実は、著者のJUNZO氏は、ゲームの仕組みを人生に応用できると考えただけではありません。
その理論を試すために、エニックスを退職したのです。
独立後は、電子ペットの商品企画や占い事業など、さまざまなことに挑戦したといいます。
しかし、順調なことばかりではありませんでした。
著者自身の回想によると、預金残高が8万円にまで減ったこともあったそうです。
普通なら、かなり不安になる状況です。
ところがJUNZO氏は、そんなピンチさえも人生というゲームのスリルとして捉えたと説明しています。
ゲームなら、所持金が少ない状態で強敵に出会うと、緊張感が高まります。
でも、それが現実の銀行口座だったら?
「ゲームなら面白いけど、現実なら笑えないぞ……」
そう思う人も多いでしょう。
著者の考え方は、それほど大胆なものだったのです。
ただし、現実にはリセットボタンがない

人生をゲームのように考える。
面白い発想ですが、注意も必要です。
ゲームなら、負けてもセーブした場所からやり直せることがあります。
しかし現実では、お金や健康を失えば、簡単には元に戻せません。
また、仕事がつらい理由が、過剰な労働や理不尽な扱いにあるなら、考え方だけで解決しようとする必要はありません。
ゲームでも、勝てない敵からは逃げることがあります。
現実でも、助けを求めたり、環境を変えたりする方がよい場合があります。
人生をゲームとして考えることと、無理をして戦い続けることは別なのです。
この本が向いているのは、こんな人

『人生ドラクエ化マニュアル』は、仕事を減らしてくれる本ではありません。
給料を増やしてくれるわけでも、嫌な上司を消してくれるわけでもありません。
その代わり、今まで面倒だと思っていた問題を、別の角度から見るきっかけを与えてくれます。
特に、ゲームでは目標に向かって夢中になれるのに、現実ではなかなかやる気が出ない人には、興味深い一冊でしょう。
反対に、具体的な仕事術や転職方法を知りたい人には、それぞれの専門書の方が向いているかもしれません。
この本は、現実を変えるための魔法を教える本ではなく、現実の見方を変えるための本なのです。
最後に

魔王は、月曜日に出社する
金曜日の夕方。
男性は、ようやく資料を完成させました。
上司「おっ、できたか。助かったよ!」
男性「ありがとうございます」
男性は少し満足そうです。
面倒な仕事でも、攻略方法を考えれば、少しは前向きに取り組める。
そう感じられるようになりました。
そこへ、また上司がやってきます。
上司「そうだ。来週から新しいプロジェクトを頼みたいんだけど」
男性「……またですか?」
上司「今度はもっと難しいぞ。やりがいがあるだろ?」
男性は少し考えてから答えました。
男性「ゲームなら、そろそろエンディングなんですけどね」
上司「何言ってるんだ。まだまだこれからだよ!」
ゲームでは、魔王を倒せば世界に平和が戻ります。
しかし現実では、一つの仕事を終えても、また次の仕事が待っています。
だからこそ、目の前の仕事をただ終わらせるだけでなく、自分が何を目指して働いているのかを考えることが大切なのかもしれません。
もっとも、ゲームと会社には決定的な違いがあります。
ゲームでは魔王を倒すとエンディングですが、会社では仕事を倒すほど次の仕事が増えていくのです。
