なぜ金が出なくても掘り続けるのか?『ガリンペイロ』が映す一発逆転の罠
「あと少し」が人生を変えると思っていた

「あと少しだけ続ければ、きっと結果が出る」
そんな言葉を、自分に言い聞かせたことはないでしょうか?
仕事。
勉強。
副業。
投資。
最初は小さな挑戦だったはずです。
でも、うまくいかない日が続くと、いつの間にか考え方が変わります。
「ここまで頑張ったんだから」
「次こそ成功するはず」
そして気づけば、やめる理由より続ける理由ばかり探している。
国分拓さんの『ガリンペイロ』に登場する男たちは、そんな人間の心理を、極端な形で見せてくれます。
舞台はブラジル・アマゾン奥地の金鉱山。
そもそも「ガリンペイロ」とは、ブラジルで金やダイヤモンドなどを探して採掘する人たちのことです。

男たちは泥まみれになりながら、今日も穴を掘ります。
しかし、金は簡単には出ません。
「もう帰ったほうがいいんじゃないか?」
外から見れば、そう思います。
ところが彼らは帰りません。
なぜなら、
「次の場所にはあるかもしれない」
と思っているからです。
昨日なかった。
今日もなかった。
でも、
明日なら出るかもしれない。
この小さな希望が、彼らをまた穴の中へ戻していきます。
※本記事は、書籍の内容をもとに筆者の個人的な感想や解釈を交えて紹介しています。詳しい内容については実際の書籍をご確認ください。
土砂から金を探す男と、嘘の中から真実を探す男

本書で一番面白いのは、金を探しているのがガリンペイロだけではないことです。
著者の国分拓さんも、別のものを探しています。
それは、
人間の本当の姿です。
金鉱にいる男たちは、よく話します。
「昔はすごかった」
「俺には大きな夢がある」
「いつか人生を変える金を掘り当てる」
しかし、その話の中には、
「本当なのか?」
と思うものもあります。
普通なら、
「嘘つきの話だ」
で終わるかもしれません。
でも著者は、そこで終わりません。

ガリンペイロが大量の土砂から小さな金の粒を探すように、
男たちの大量の言葉の中から、小さな真実を探します。
何気ない表情。
急に変わる話題。
黙り込む瞬間。
何度聞いても変わらない記憶。
逆に、少しずつ変化する話。
そこから、
「この人は本当は何を抱えているのか?」
を掘り出していきます。
金を掘る男。
人間を掘る男。
場所は同じでも、探しているものは違います。
しかし二人とも、
見えないものを掘り続けている。
そこが『ガリンペイロ』の面白さです。
僕たちも小さな金鉱を掘っている

アマゾンの金鉱山とは違いますが、僕たちの日常にも似た場面があります。
「この仕事を成功させれば評価される」
「この資格を取れば人生が変わる」
「この方法を続ければ必ず結果が出る」
もちろん、努力が報われることもあります。
続けることでしか見えない景色もあります。
ただ、時々考えたほうがいいことがあります。
「自分は本当に目標へ向かっているのか?」
それとも、
「ここまでやったのだから、やめられないだけなのか?」
ということです。

ガリンペイロたちは、
「大きな金塊を見つければ、今の人生から抜け出せる」
と信じて掘り続けます。
でも、金が出ないまま一年、二年と過ぎていけば、その間にも人生は進んでいきます。
人生を変えるために始めたはずなのに、
「いつか金が出るかもしれない」と待ち続けることに、大切な時間を使ってしまう。
そこが少し怖いところです。
そして本書は、人の話を聞く時にも少し違う視点を与えてくれます。
誰かが、
「会社が悪い」
「上司が悪い」
「世の中が悪い」
と言った時。
すぐに信じるのではなく、
「その話の中には何が埋まっているのか?」
と考えてみる。
人の話も、金鉱と同じなのかもしれません。
表面には泥や石ころが多い。
でも、その奥に、その人にとって大切なものが隠れていることがあります。
最後に

ガリンペイロたちは今日も穴を掘ります。
「次こそ金が出る」
そう信じて。
でも、これはアマゾンだけの話ではありません。
僕たちも時々、
成功。
評価。
理想の人生。
そんな「自分だけの金塊」を探しています。
もちろん、努力することは大切です。
ただ、気をつけたいのは、
「叶えるための努力」が、いつの間にか「諦められない理由」になっていないか?
ということです。

人生を変える宝物を探していたはずなのに、
気づけば手元に残っていたのは、
「もっと早く戻ればよかった」という気づきだけ。
そんなことにならないように、
ときどき、自分が向かっている場所を確かめることも大切なのかもしれません。
