本を閉じたのに、脳はまだ読んでいる?――読書が脳に残す、意外な3つの影響
はじめに

座っているだけの人間
休日の午後。
一人の男性が、椅子に座って本を読んでいます。
テレビも見ない。
スマホも触らない。
ただ、黙ってページをめくるだけ。
「本を読むだけで、何か変わるのかな?」
見たところ、何も起きていません。
ところが、脳の中では興味深いことが起きているようです。
しかも、その影響は本を閉じた後まで続くことがあるといいます。
※本記事は公開された科学研究をもとに、筆者の解釈を交えて制作しています。会話や登場人物は説明のための創作であり、研究結果がすべての人に当てはまるとは限りません。
本を閉じても、脳はすぐに元どおりにならない?

男性が小説を読み終えました。
「面白かった! さて、次は何をしようかな?」
本を閉じれば、読書はおしまい。
ところが、脳ではそうとも限らないようです。
2013年、アメリカのエモリー大学の研究チームが、小説を読む前後の脳を調べました。
すると、読書期間中に脳内のネットワークのつながり方が変化し、その一部は読み終えた数日後まで残っていたのです。
ただし、これは少人数の実験で、脳の能力が向上したと証明されたわけではありません。
それでも、面白い発見です。
本人はとっくに本を閉じているのに、脳にはまだ読書の影響が残っている。
どうやら物語は、最後のページで完全に終わるとは限らないようです。
小説を読むと、他人の気持ちが分かるようになる?

ある男性が、推理小説を読んでいます。
最初は探偵の味方です。
「犯人は絶対に許せない!」
ところが、犯人の過去を知ると……。
「うーん、犯人にも事情があったのか…」
いつの間にか、相手の立場で考え始めています。
実は、これに関係する研究があります。
2024年に発表された70件の実験をまとめた研究では、フィクションを読むことによる認知面への小さなプラス効果が確認されました。
特に、他人の考えや感情を理解する能力との関係が注目されています。
もちろん、小説を読めば必ず人の気持ちが分かるようになるわけではありません。
それでも、読書には面白い特徴があります。
自分とはまったく違う人間の立場から、世界を眺められることです。
しかも、必要なのは一冊の本だけ。
覚えたい言葉は、声に出すと記憶に残りやすい?

男性がビジネス書を読んでいます。
「なるほど! これは覚えておこう!」
ところが翌日。
「……何が書いてあったんだっけ?」
せっかく読んだのに、思い出せません。
そんなときに試せる方法があります。
それは、覚えたい文章を声に出して読むこと。
心理学には「産出効果」という現象があります。
黙って読むより、声に出して読んだ言葉のほうが記憶に残りやすいというものです。
2023年に発表された研究でも、音読による記憶への効果が報告されています。
ただし、文章の内容まで深く理解できるとは限りません。
とはいえ、すべてを音読する必要はありません。
大事だと思った一文だけ、声に出してみる。
それだけでも、読書の楽しみ方が一つ増えそうです。
最後に

本を開くだけで、別の人生が始まる
読書というのは、不思議な行動です。
椅子に座ったまま、ほとんど体を動かしません。
ところが、小説を開けば……。
探偵になって難事件を解決します。
冒険家になって未知の大陸を探検します。
ときには王様になり、国の運命まで背負います。
そして、物語が終われば現実に戻ってきます。
「いやあ、大変な冒険だった!」
そう言って立ち上がった男性。
実際に移動した距離は、椅子から本棚までのわずか数歩です。
それなのに、頭の中では世界中を旅してきました。
しかも、物語を読むことと脳の働きの間には、科学的にも興味深い関係が見つかっています。
もちろん、読書は勉強や健康のためだけにするものではありません。
面白ければ、それだけで十分です。
何時間もかけて大冒険をしたのに、交通費はゼロ。
おまけに、気に入った冒険なら何度でもやり直せます。
こんな便利な旅行手段は、なかなかありません。
次の休日は、一冊の本を持って、どこか遠くへ出かけてみませんか?
