自己啓発
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ホワイトカラーはどこへ消える?『ホワイトカラー消滅』で考える“自分サイズ”の働き方

知恵乃学(ちえのまなぶ)
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はじめに

■働いているのに、不安が消えない時代へようこそ

「人手不足なのに、仕事がない?」
——そんな言葉にドキッとした方もいるでしょう。

職場では常に人手が足りないのに、ニュースではリストラやAI化の話題ばかり。
まるで片方の口で「助けて」と言いながら、もう片方で「君はもういらない」と告げるようなものです。

矛盾に満ちたこの現実こそ、私たちが生きる“働く時代”の姿かもしれません。

冨山和彦氏の著書『ホワイトカラー消滅 私たちは働き方をどう変えるべきか』(NHK出版新書 728)は、そのねじれた構図を冷静に、しかしどこか情熱的に描いています。

少子高齢化で人手が不足している一方で、AIやデジタル化の波がホワイトカラーの仕事を次々と飲み込む。

この状況は、明治維新期に身分や役割が大きく入れ替わった出来事を想起させるほどの構造変化だと感じられます。

私たちはいま“働き方の大転換期”の真っ只中に立っているのではないでしょうか。

AIが奪うのは「仕事」ではなく「単調さ」

AIの波で最初に飲み込まれるのは、毎日同じことを繰り返すデスクワークです。

調整業務、資料作成、データ入力。
人間が時間をかけていた作業を、AIは一瞬で終わらせてしまいます。

もしAIが夜通し資料を整えてくれるなら、私たちはその分、ゆっくり休むか、朝一番に好きなカフェでコーヒーを楽しむこともできます。

著者は、AIを敵ではなく“単調さを引き取ってくれる味方”として描いています。

AIがルーティンを肩代わりしてくれるからこそ、人間はより創造的で、人と関わる価値ある部分に集中できるのです。

つまり『ホワイトカラー消滅』とは、「仕事がなくなる」話ではなく、「人が仕事の意味を取り戻す」物語です。

AIが奪うのは退屈で息の詰まる作業だけ。
残るのは、思考し、感じ、選び取る
——人間にしかできない領域なのです。

グローバルは余り、ローカルは足りない

著者が提示する「G型(グローバル)」「L型(ローカル)」の構造は、まるで日本経済の縮図のようです。

G型の世界ではAIが猛スピードで進化し、効率化が極限まで突き詰められています。会議も分析も瞬時に終わり、人間が入る余地はどんどん減っていっています。

一方、L型の現場(介護や物流、観光、農業など)では、今日も人手不足が深刻です。誰かがAIのデータを扱う前に、そもそも現場に人が足りないのです。

つまり今求められているのは「人材のシフトチェンジ」です。

オフィスで数字を見ていた人が、現場でデータを使いながら働き方を改善する。
これが、“現場×テクノロジー”という新しいスタイルです。

介護や教育、地域のサービス産業など
——AIが苦手な“人と関わる現場”こそ、テクノロジーの力で輝きを取り戻せる場所なのです。

40代からでも遅くない、“学び直し”のすすめ

著者が強調するのは「アンラーン(学びの棄却)」という考え方です。

これまでの成功体験や常識を一度リセットし、もう一度基礎から学び直すこと。
それが、キャリアを再び動かすスイッチになると語っています。

近年よく聞く「リスキリング」(新しいスキルの習得による再教育)や「リラーン」(知識や価値観をアップデートする再学習)も大切ですが、その前に必要なのは“忘れる勇気”です。

過去の自分のやり方をそっと脇に置く。
その瞬間に新しい扉が開く。
少し痛みを伴いますが、それは成長のサインです。

さらに著者は、読み・書き・数学・簿記といった基礎リテラシーの大切さを説きます。

目立つスキルよりも、地に足のついた基礎力こそが未来の武器になるのです。
AIが何でもやってくれる時代だからこそ、人間が磨くべきは“考える力”

派手ではなくても、積み重ねた知識と判断力が、次の時代を生き抜く鍵になるのです。

「仕事の終わり」ではなく「働き方の再起動」

第5章「日本再生への20の提言」では、個人と社会の両方がどう変わっていけるかが語られています。

デジタルと現場をつなぐ人材の育成、地方経済の再生、教育への再投資
——どれも国全体の話のようでいて、出発点はいつも“あなた”です。

たとえば、週末に地元のカフェのSNSを手伝ってみる。
介護施設の業務フローを見直して、少しだけ便利にしてみる。
そんな小さな行動が、実は次の働き方のヒントになるのです。

「現場×デジタル」をほんの少し試してみること。
それは転職や大きな決断ではなく、“未来の自分へのテスト運用”のようなものです。

トライ&エラーを繰り返しながら、自分の働き方を再起動していく
——それこそが、これからの新しいキャリアの第一歩なのです。

「働く」は変わっても、なくならない

『ホワイトカラー消滅』は、決して悲観の書ではありません。
むしろ、AI時代にこそ人間らしさが試される希望の書です。

AIが資料を整えるなら、私たちは人と語り、考え、感じる時間を取り戻せます。
数字を読むのがAIなら、そこに意味を吹き込むのが人間です。
論理を磨くのがAIなら、温度を伝えるのは人間。
そんな分業が、これからの共存の形なのです。

仕事は消えません。
消えるのは“同じことを繰り返す作業”であって、“誰かの心を動かす仕事”は残ります。

形を変えながら、人の手と心を必要とする場所へと移っていくだけなのです。

最後に

■あなたはどんな働き方で生きていきますか?

かつての武士が刀を置いて新しい時代を歩んだように、私たちも今、パソコンやAIという“新しい刀”を手にして生き方を選び直す時代に立っています。

重要なのは、肩書きや職種ではなく、どんな場所でも“自分の価値”を生み出せる力です。

『ホワイトカラー消滅』は、「働くって何だろう?」と立ち止まるきっかけをくれる一冊です。

効率や便利さの影で失われかけた“人間らしさ”をそっと呼び戻してくれます。
AIがどれほど進化しても、最後に決めるのは私たち自身の意志です。

だから今こそ、仕事を「こなすもの」から「自分を映す鏡」へと変えていくチャンスなのです。

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